表彰式も終わった。全部終わった。疲れたし、なんだかんだショックも大きくって。だらだらとみんなで帰ってたら、結局最後まで一緒なのは苗字で。
「丸井。私、アイス食べたい。コンビニ行こう」
"家に帰るまでが遠足だ"なんて言葉を思い出した。そう、まだ終わらせたくない。俺は頷いて彼女に着いて行った。
夏だから日は長いとはいえもう夕暮れの時間。公園には人影がない。二人でベンチに腰かけて、何も言わず先ほどコンビニで買ったアイスを頬張る。
「終わったねえ」
「終わったなあ」
アイスがなくなった。アタリもハズレも何も書いてない棒。苗字は、まだ食ってる。
「泣かないの?」
「泣いていい?」
「いいよ」
視界がぼやける。やっぱりちょっと恥ずかしいから苗字に見られないようにうつむいて泣いた。声も出さないようにした。苗字は隣でずっとアイス食ってた。食べんの遅え。
一頻り出して満足した頃には辺りはもう真っ暗だった。いつの間に。隣を見ると、大あくびをかましてるところだった。
見つかった苗字は小さく笑った。
「丸井」
「ん、なに」
「私にとって、丸井は一番の友達だと思うよ」
…思うって何だよ。えらく曖昧な表現だな。ずっと欲しかった言葉のはずなのに、なんか腹立つ。わかってて言ってるんだろうか。なら一層腹立つ。
俺にとって一番の友達ってのはもちろんジャッカルだ。そしたら、苗字は二番目の友達なのか?いや、違う。ジャッカルのそれと苗字のそれとは、ちょっと違う気がする。まあ、そもそも友情に順番なんてないんだろうけど、でも、やっぱり。
「俺は、」
彼女を一番よく知ってる人になりたい。よくわからない彼女を知りたい。掴み所のない彼女を掴みたい。彼女を、理解したい。最近、ずっと。というか前から、ずっと、思っていた。彼女に認めてもらえて嬉しい。
………。おいおいおい、俺も馬鹿じゃないから、さすがにこの感情がジャッカルに対しては起きない理由がわかった。そういうことかよ、と、今は溜め息を吐くしかなかった。
苗字が、好きらしい。
「まー、ありがとう」
今のところはそれしか選択肢がないようだし。俺の欲しかった彼女の気持ちがまったくないわけではない。ただ、俺の貪欲さが増しただけ。
どういたしまして、とへらりと笑う苗字。これからのことはこれから考えよう。まあ、今はどうしようもない。なんとかなるもんかな。なんて、彼女の自由奔放さが移ったのかもしれない。今は、このままで。
16.05.2013
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