あの子は自由人 | ナノ

話してみる

「苗字さんは前どこに住んどったんじゃ?」
「大阪」
「訛っとらんのう」
「生まれはこっち」
「ほうか」

 仁王が会話を続けようと試みるが、それにしても彼女は返事が簡潔、かつ適当で、まったく続ける気なんてなさそうだ。だけどそれは別に、会話をしたくないから、というより、会話する気がない、って感じ。どっちも同じように聞こえるが、彼女の場合はちょっと違う。ただ、やる気がないだけだと思う。
 相変わらず表情はないが、質問にはちゃんと返す。そう、適当に。

「俺達、土曜日にバッティングセンターの前で苗字さんを見かけてたんだよい」
「土曜日?ああ」
「よく行くんか?」
「まあまあ」
「野球好きなの?」
「まあまあ」
「女子にしては珍しいのう」
「あー、小学生の時、少年野球チームに入ってたし」
「へー、すげえじゃん」
「中学では何もやっとらんかったんか?」
「いや、野球部で、」

 おー。なんか会話が成立してる、気がする。ちょっと気分が良くなってきた。隣の仁王も同じくノリノリである。

「じゃあさ、こっちでは部活入んの?」
「中途で入れる部活なんてないだろうし」

 どこかの部活に所属している、そして所属しようと思っている節もない。むしろこれは押したら勝てる、チャンスなんじゃないか?これは幸村くんたちに良い報告が出来るじゃん!
 


「色々質問攻めにして、悪かったのう」
「転入生だし仕方ない」

 ようやくへらりと表情を変えて笑ったが、すぐに大きなあくびに変わった。なんか、度胸がある云々ってより、自由人って感じ。失礼なことをいうと、なんか女子とは思えなかった。

 ともかく、苗字名前、こいつはもしかしたら当たりなのかもしれない、と仁王と顔を見合わせ、さっそく幸村たちに報告に行った。

 

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