あの子は自由人 | ナノ

良い奴止まり

 教室に戻ると、苗字がげっそりと、やつれていた。

「お疲れ?」
「うーん」

 当然だ。終業式も間近の本日3月14日は、モテる男子にとってはとても大変な日なのだ。…モテる女子苗字にとっても。バレンタインに貰ったお返しを今しがたばらまいてきたのだろう。朝方机に提げてあったカバンは、ぺたんこになっていた。
 さわやかな香りのする飲むヨーグルトを苗字はズズズズとすすった。そんな彼女に、昨日大量に作ったクッキーの入った袋をひとつ渡す。実は特別に用意していたもの。

「あげてないのに」
「だったら頂戴」
「もちろん」

 彼女は紙袋の下の方から小箱を取り出した。彼女らしいシンプルなラッピング。だけど、実は中身はちょっとだけ特別仕様なのだと教えてくれた。

「丸井って、やっぱり良い奴だよね」

 ふうー、と溜め息をついて彼女は言った。もちろん、苗字にとって、仁王や赤也よりは断然良い奴だという自覚はある。だけど、ただの良い奴じゃなくて、本当は"仲の"良い奴だって思って欲しい、なんて、…最近思うようになった。

 しかし、彼女はニタリとよからぬ笑みを浮かべる。

「桑原の次に」
「ジャッカルかよ!」

 ここでまさかの刺客、ジャッカル。そういや、冬休み終わった後にジャッカルが『苗字に良い奴だなって言われた』って、ちょっと嬉しそうに話してたけど。まさかの。
 苗字は空になった紙パックを折りたたみながら続ける。

「さっき『お疲れだな』って、ジュースおごってもらった」


 …さすがジャッカル、おごり慣れてる感、半端ねえ。

 うん、ジャッカルには俺も敵わないんじゃないかな。さすが、ジャッカル。後で一発殴っとこう。軽めに。うん、軽めな。

 

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