あの子は自由人 | ナノ

手をつなごう一緒に

 結局、はぐれてしまった。そうなるであろうことなど、始めからわかりきっていたから、この人混みで全員を見つけられる自信はなくとも、そう焦ることもなかった。いや、あいつらの身長なら簡単に見つかりそうだ。
 とはいえ、一番始めに見つけたのがマネージャーとは、なかなかに面白い機会である。

「他の奴らと連絡とった?」
「いんや、1人で自由行動取ろうと思うとったところぜよ」
「じゃあ、それなら」

 私、どこかで待ってるし、自由行動してきていいよ、なんて言おうとした苗字の手を取って、続く言葉を遮った。意味がわからない、といった顔である。

「マネージャーも一緒、ナリ」

 返答も聞かないうちにそのまま歩きだしてやった。
 どう見ても彼女は手を繋がれたままなのがお気に召さないようだが、お構い無しである。ブンちゃんなんかが好きそうな屋台を見てみたり、たまに買ったり。なんちゃってデートを楽しんでみた。もちろん、楽しんでいるのは俺だけで、苗字は仕方ないからついてくるだけである。繋がれた手も、もう観念したようだった。

 普段、マネージャーを女子だと意識することはない。何かが起こった時(例えばラブレター事件とか)にふと彼女の人間らしさが見え、よくわからない感情が沸き上がることはあるが、そもそも彼女自身がそういうところを見せたくないのかもしれない。かといって、こうやって手を繋いでみても、嫌がる割りに彼女の"女"の部分は出てこない。

「おー、柳と真田がおる」

 周りより飛び抜けた頭で、前方にいた彼らを確認する。赤也やブン太はともかく、他の奴らは本当にすぐわかる。向こうもこちらに気付いた。

「ほう。この人混みと苗字の身長なら、仕方がないな」

 繋がれた手を見て、柳は面白そうに一層目を細めた。苗字が少しイラついたのがわかる。しかし離してやらない。

 そしてすぐに、柳と真田の頭を目印に、ジャッカルと柳生に連れられた赤也とブン太とも落ち合うことが出来たが…その時の二人の唖然とした顔よ。


 普通の女子と違う苗字だからこそ気に入ったのに、何故だか女の子だと意識をしたい、させてやりたい。そんな、不可思議な気分だったから、自分よりずっと小さく細い手を離さなかったのだ。

 

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