あの子は自由人 | ナノ

心当たりがある

「ちょっと困ったことになってね」

ほう、と儚げにため息をついたのは幸村くん。練習後、レギュラー陣をベンチに集めてこれから話すことを、たぶん全員がわかっていた。

「そうなんだ。結局あのマネージャーの子、辞めちゃってね。人手が足りないんだよ」

 夏の全国大会が終わって先輩達が引退、当然三年のマネージャーも引退。下の学年に何人かいることはいるのだが、女子マネージャーはほとんどが長続きせず、新人戦を前にした現在、顕著な人手不足に陥っていた。そうだよな、中学生だからマネージャーなんて役職よりも選手の方が絶対楽しいし、青春したいならサッカーか野球部の方が断然人気。しかもうちのテニス部はやったら女子に人気があって…まあ、女子マネは堪えられずに辞めていく。

「出来れば男子だが…」

 そう柳は言うが、2学期が始まったというこんな時期に、ましてや部活をしていない男子なんか捕まるわけがない。それは全員がわかっているから、幸村くんが付け足す。

「度胸のある女の子とかね」

 人気のテニス部員にうつつをぬかさず、かつ女子どもの嫌味、いじめに堪えられる程の度胸のある女子なんているわけがない。これもまた、全員がわかっていることだが。…と、最近、度胸という言葉をどこかで使ったような気がする。なんだったっけな。

あ。

ジャッカル、仁王、柳生、そんで赤也も同じことを考えついたらしく、お互いに間の抜けた顔で見合った。みんながみんな、なんか間抜け面だった。

 

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -