食べて、騒いで、飲んで、途中苗字が見せた映画のせいで気まずい空気になって。けど、やっぱり最後は騒いで。なんだかんだで大好きな仲間で、クリスマスらしくなくたって一緒にいると楽しい。
まあ、そんなパーティも終わって、いよいよ帰る時間になった。外はもう真っ暗だ。
「私、家近いし、ちょっと片付けてから帰る」
「それなら俺も」
赤也と仁王、柳生は先に帰ってもらい、食べ散らかした後処理を手分けしてやる。ブン太は余った菓子をつまんで見てるだけだが、長い時間場所を提供してくれたんだから、文句は言わないことにした。
「じゃーな」
苗字を送っていくことになった。これまで二人で話すことはあっても、ここまで二人っきりって状況はあんまりなかった。ちょっとの距離だが、何を話せばいいのやら。…いや、変に意識するから駄目なんだな。
「実は誰にも言ったことないんだけどさあ」
「ん?」
彼女からだった。
「私、立海のテニス部なんて、全然知らなかったんだけど」
まあ、テニスに興味ない奴からしたら別に知らなくて当然だもんな。だが、編入するにあたって、誰かしら全国二連覇してるテニス部のことを話してほしかったな、とも思う。
「桑原のことだけは知ってた」
………………何の告白だよ!
いや、苗字に限って、そういった深い意味なんて何もないってのもわかってる。だけど、それを普通に、サラリと言ってのけるからタチが悪い。こんなこと言われるのは、いくら意識してないとはいえ、照れるし、恥ずかしいし、やけに緊張する。とりあえず、次の言葉を待つ。
「昔、友達が『ジャッカル超カッコいい!』って言ってて、まあ知らない人だから聞き流してたんだけど、印象的な名前だから覚えてたんだよ」
あー、そういうことな。だけど、彼女の友人にそんなに言われるほどのことをした覚えもないんだが。昔って、ジュニアの頃か?
「友達の言ってたとおり、桑原は不憫で、良い奴だよ」
一層謎は深まるばかり。不憫はねーよ、不憫は。苗字は俺のことをそんなふうに見ていたのか。自覚はあるけど。
まあ、だけど、良い奴だと笑って言われるのは悪い気はしない。
「その友達のためにも、頑張って活躍するよ」
「んー期待してる」
へらりと笑った顔は、意外と可愛いもんだった。今までそんな風に意識したことはなかったんだがな。
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