あの子は自由人 | ナノ

それは良い意味で

 2学期の期末考査が終わった。俺自身は今回も悪くない結果だったし、テニス部においては赤也がまた英語で悲惨な点数を取って放課後の補習授業が追加されてたくらいで、あれ以来何の事件もなく、静かに冬休みが始まろうとしていた。

 幸村くんは今、部活に、というより学校にも来ていない状況である。だけど、テニス部もそれにだんだん慣れて、落ち着いてきたって感じがする。まあ、いた頃の雰囲気とは結構変わっている気がするんだけど。


 だけど、苗字は相変わらず。

 幸村くんが倒れた次の日の朝も、検査の結果が出てどんな病気なのかってのがとりあえずわかってからも、学校では相変わらずぼーっとしてるし、部活ではやるべき仕事をただ淡々とこなすだけ。仕事が増えようが、何にも変わらない。
 聞くところによると、テストで部活が休みの間でも、レギュラーであるなしに関わらず、頼まれれば自主練のコーチ役として付き合うこともあったとか。良く出来たマネージャーは健在である。

 苗字を冷徹だと陰でこそこそ言う奴もいる。そりゃあ俺だって、正直、普通の女子中学生にしてはちょっと、というかかなりおかしい奴だとは思ってる。すごく思ってる。有り得ないとも思ってる。

 だけど、そんな彼女を何故か嫌いにはなれない。

 少し経てば、結局苗字がしたこと、することは全部チームのためであり、チームになくてはならなかったのだとわかる。俺たちが精神的に参っていても、彼女はちゃんと支えてくれている、と自覚する。

 本当、不思議な奴だよなあ。


「不思議?」

 思ってたことが口に出ていたようで、当の本人に聞き返された。

「うん、苗字のこと」
「それって貶してんの?」

 そりゃあ、"不思議"なんて普通プラスの意味では使わないけど。なんだか面白くなって、変に笑いが止まらなくなった。


「いや、褒めてんの!」


 なんだかんだ言って、こいつといるのは楽しい。

 

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