あの子は自由人 | ナノ

ラブロマンスを君に

 翌日の午後、練習を終えると一旦各々の自宅へ帰り、そしてまた集まるのは俺の家。

「何が楽しくてむさ苦しい男ばかりで集まらにゃならんのか」

 じゃあ来るなよ。といっても、参加させたのは俺だけど。赤也も言い出しっぺのくせに、やっぱりクリスマスな雰囲気が足りないだのごちゃごちゃ文句垂れてるし、結局いつも通りだ。ちょっと違うのは仁王や赤也、柳生、ジャッカルに持ち寄らせた大量のお菓子にジュース、そしてケーキワンホール。
 けど、まだ終わりじゃない。

「そーいう苦情が出ると思って呼んどいた」

ピンポーン、とチャイム音。

「丸井、チョコレートケーキで良かったっけ」

 今回はチョコレートケーキもあるぜ!と言っても、誰もケーキには反応しなかった。そう、持って来た苗字の方に驚いている。

「マネージャーが来るとは」
「そもそも、ブン太の家をよく知ってたな」
「降りる駅が一緒だと聞いてはいましたが」
「もしかして先輩ら、そういう仲だったり…いっ!?」

 本気で考えてそうな赤也をとりあえず殴っておく。違うから。何もないから。ただノートの貸し借りで何回か来てもらっただけだし。そんなことより、チョレートケーキワンホールだろい。

 適当な場所に腰をおろした苗字も加えて、食べたりごろごろしたり喋ったり食べたり食べたり。いつも通りすぎて、だけどそれが心地好い。

「あ、DVD借りてきたけど」
「『ジャッカルの日』……絶対おもんねーよい」
「俺を見て言うな。ってか、苗字もタイトルで選んだろ」
「いいえ!それは小説、映画共に傑作と名高いサスペンス映画ですよ。素晴らしい選択です」
「クリスマスなんだから、サスペンスより『ホーム・アローン』とかで良いんスけど!」
「……『ダイ・ハード』もクリスマスぜよ」

 苗字はフンと鼻を鳴らして笑った。これは絶対良からぬ笑みである。全員、何が来るのかと構えたが、彼女は鞄からもうひとつケースを取り出し、誰にも見せないままデッキに入れた。

「ちゃんとクリスマス仕様の、しかも店員さんイチオシのものを借りてきました」



 『ラブ・アクチュアリー』

 確かに、確かに良い作品だった。うん。感動もした。クリスマスでもあった。
 …けど、こんな感動的、だけどべったべたなラブストーリーを、男ばっかりで鑑賞して楽しいと思うか?これ、絶対わかってて選んだろ。確信犯か。あの笑みは絶対これだろ。


 感動と気まずさの狭間。
 微妙な空気。


 だけど、苗字だけは静かにチョコレートケーキを頬張っていた。あ、ケーキのクリームが口の端についてら。

 

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