「で、ジロくん。今日どこ行くつもりなの?」
氷帝まで来て、東京で遊ぶからには、ジロくんオススメのスイーツに期待して来たわけだ。しかしジロくんは答えの前に、ぐっちゃぐちゃな鞄を漁り、何やら取り出した。
「それがさー、アトベがバイキングの券くれたんだよねー」
見れば跡部の家が経営するホテルのレストランの、ケーキバイキングの優待券。…タダ券である。理由はわからないにしろ、跡部、あいつは神か何かなんだろうか。有難すぎて、涙が出そう。
とりあえず三人で、目的地まで移動する。とても大きなホテルに、不釣り合いな制服の中学生三人で。しかもかなりの階層。窓ガラスが大きくて、超景色が良い。しかしタダ券。もう一度跡部を神と崇めた。
「とりあえず、初めましてー!丸井くんのー友達のー芥川ジローでっす!」
「丸井のクラスメイトでテニス部マネージャーの苗字名前です。よろしくー」
「名前ちゃんねー!丸井くんから話聞いて、すっげー会いたかったんだよねー!」
ジロくんが握手した手をブンブン振り回すも、苗字は別段驚きもせずちょっと笑っていた。この二人は意外と仲良くなれるような気がする。いつも適当感溢れる苗字が、より適当になっているように見える。こういう機会があったら、また三人で集まるのもいいかもしれない。
「前、大阪住んでたし、美味しいスイーツの店なら知ってるよー。友達にも聞いておこうか」
「関西制覇出来るCー!!」
むしろ、絶対に、関西スイーツ旅は決行する。絶対。
← → ▼