あの子は自由人 | ナノ

いざ行かん

「今度、氷帝のダチと会うんだけど、一緒に来ねえ?」
「行く」

 次の日曜日、珍しく一日中練習が休みだったので、東京のジロくんと会う約束をしていた。あいつは午前は練習らしいから、迎えついでに見に行こうと。そういえば、苗字が氷帝に興味があるとか言ってたなー、と、誘ったら、結構乗り気らしい。

 昼からはただ遊ぶだけなんだけど、ジロくんの練習が終わるまでは部活の見学をするつもりだ。
 苗字と駅で落ち合い、電車やバスを乗り継いで…とうとう氷帝まで来た。ちなみに今日のことは立海のメンバーには言っていない。変に偵察しろだとか言われても困るし、後半はジロくんがいるにしろ苗字と二人だとかひやかされるのも…なんだかなあ。一方の苗字は何のお構いもなしだから、俺が気にしたって仕方ないんだけど。

 テニスコートまで来ると、さすがは200人の大所帯の部。どこからも掛け声が聞こえてくる。しかし、そんな大所帯でも目当てのレギュラーは見つけやすい。何と言っても見学の女子の量と声援が格段に違う。
 多くの人に混じって、しっかりした観覧席に座り、俺たちも見学することにした。この間はゆっくり見れなかった苗字に、俺の知ってる限りの情報を与えてやる。だいたい興味無さげに、ふーん、と聞き流すだけだが、やはり何人かはなんとなく知っているらしい。見たことがある程度、だけど。


 後から颯爽とコートに入ってきた人物を目にしたとき、苗字は動きを止めた。

「跡部はやっぱり知ってるんだな。…あれだもんな」
「あのキャラは忘れられないもんなあ」

 あのパチーンッてのは何度見てもおかしくなる。お互い思い出してちょっと笑ったが、苗字のはほんの少しだけ辛そうなものだった。何だろう。


「あーっ!丸井くーーん!!」

 深く考える前に、大きな声でジロくんに呼ばれたことによって、それ以上考えることもなくなったのだけれど。

 

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