あの子は自由人 | ナノ

シャラララ

「今日の練習、早めに抜けていいですか」

 珍しい口調で真田に言うもんだから不思議に思ったが、真田はそれをあっさり許可した。

「真田くん、苗字さんは体調でも悪いのですか?」
「いや、幸村の見舞いだ。女子から幸村宛てに渡された菓子を届けたいと。まあ、事前に幸村からも頼まれていたからな」

 なるほど。そういえば、机の両脇に紙袋が提げてあったが、あれは幸村くんの分か。片一方がやけに多かったのは…そういう訳なのか。

「そんなら、部活終わってからみんなで行きましょうよ!」
「マネージャー自身いっぱいもらってるから、荷物を全部持てるかわからんぜよ」

 何故かそんなやり取りが始まり、結局練習を早めに終わらせて(あくまで全行程は行われるが)、レギュラー全員と苗字で幸村くんのお見舞いに行くことになった。恐らく、赤也は幸村くんのもらったチョコレートの数でも数えたいんだろう。


「幸村、約束通り持ってきた」
「ありがとう、みんなも」

 帰り道でまだまだ増えていったそれをじゃんけんで負けた真田が、さらに苗字のをジャッカルが運んで来たわけだ。だけど幸村くんはそれをベッドの脇において、ほとんど興味がないらしい。苗字をにこにこと見つめる。

「で?」

 で?と言われても。苗字は黙ったままで、お互いに見つめ合っていた。周りも何が何だかわからず、沈黙を貫く。先に口を開いたのは幸村くん。

「苗字からはないの?」
「…ある、と思ってた?」
「一応女の子だし、みんなに作って来てくれるかなー、なんて。思ってなかったけど」

 苗字は大きな溜め息をひとつ吐いた。今日同じような会話を聞いたなあ、と思い出す。だけど幸村くんは仁王と違って、果てしなく男前だったのだ。

「だから、はい」

 苗字に手渡されたそれは、綺麗にラッピングされた小箱だ。お返しを楽しみにしてるよ、と綺麗な顔で笑う幸村くんは本当の本当に男前だった。ただし、苗字は心底嫌そうな顔をしていたのだが。

 

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