あの子は自由人 | ナノ

あるわけがない

 登校中から女子から可愛らしくラッピングされた包みやら箱やらを渡される。…朝練前なんだけど。よくこんな朝早くから待ち伏せするなあ。俺は甘いもの大好きだから嬉しいっちゃ嬉しいんだけど、他の奴らにとっては結構キツい日だったりするんだろうな。
 のろのろと歩く苗字に追いついた。おはよう、となんとも気の抜けた挨拶。今日の苗字は珍しく、普段持ち歩いている鞄の他に余計に持っていた。


「苗字ーまた呼び出しだぜー」
「はーい」

 おい、今日何人目だよ。これで5人目じゃね?しかも呼び出し以外にも何個かもらってるとこ見たし。何だよ、今日は男の子のための日だろ?…羨ましすぎる。と、男子たちの嘆きが聞こえる。

「苗字が今日重装備だった理由はこれか」
「予想以上だけど」

 袋を6つ両手に抱えて帰ってきた。そしてそれを俺の机に丁寧に全部下ろした。

「2人の女の子が、丸井と仁王にも渡しといてくれって」

 仁王はちょっと嫌そうに顔をしかめた。こいつ、甘いのとか好きじゃないもんな。まあ人からもらったものを無下するわけにもいかないので、1人ふたつずつもらう。

 こんな風に、クラスに来た女子が三人分渡すってパターンも多かった。こいつが女子にモテる理由は、大半がテニス部に入部したからだろうな。そのままでも無駄に男前なのに、俺たちを見に来てそのままコロリ、なんて。

「苗字は甘いもの好きだよな」
「ん、だから嬉しいけど」

 お返しがね、と苦笑い。仁王は食べれないから返さない宣言してるけど、そういうわけにはいかないもんなあ。


「で、マネージャーからはないんかのう」

 ニヤーっと口角を上げ、仁王は苗字に言った。苗字は呆然と、仁王を見た。

「仮にもマネージャーも女子なんじゃから、部活のメンバーに手作りの何かを用意して」
「ない」

 次は即答だった。仁王はあからさまにガッカリしたフリをしたが、彼女はまったく気にした様子もなく、むしろあると思った?と俺に聞く。正直に言おう…、まったく考えなかった。

「部活のメンバーから甘いもの欲しいんなら、ブンちゃんに頼めば?」
「ブンちゃん言うな」
「男からはいらん」
「じゃ、それ全部食べなよ」
「ぬう」

 完全に言いくるめられて、結局諦めざるをえなくなった仁王。まあ、でも、考えてみると俺も欲しいな、なんて。思ったり思わなかったり…。

 

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