下駄箱に白い封筒。
その靴箱の持ち主は、苗字。
だけど、その中には俺の上履き。
上履きの上に真っ白な封筒。
「なんじゃ、ブンちゃん。ラブレターかのう?」
「あー…、いや」
封筒はただ白いだけで、表に宛先は書いていない。当然、宛先(とその内容)は中身を開けて見ないことにはわからない。が、そもそも苗字の靴箱だから、もし苗字宛てだった場合、勝手に見ちゃってもいいんだろうか。迷う。超迷う。
「先輩、ラブレターっスか?」
「いや、それがなあ」
「………貸しんしゃい」
見かねた仁王がそれを取り上げて、勝手に中身を開いた。…俺のだったら別にいいけど、あいつのだったらどうなっても知らねえぞ。と考えつつ、三人で便箋を覗き込む。
「えーっと…、『昼休みに1人で裏庭へ』………あれっスか、告白のお呼び出し」
「ちょい待ち」
「宛先、苗字って書いとるぜよ」
あ、やっぱり苗字のじゃん。勝手に、しかも三人で見ちゃったけど、これくらいの内容なら許容範囲よな。
「…でも、この字明らかに女子っスよね」
「女子から呼び出し…?」
「そりゃあ」
女子からの呼び出しっていえば、ヤバい方もあるよな。テニス部のマネージャーとか調子乗ってんじゃねえよ、とか。そのせいで今まで何人の女子マネが辞めてきたことか。
いいや、彼女はよってたかってグチグチ言われたって、傷付いたり落ち込んだりするようなタチじゃない。たぶん。だけど、嫌な気持ちにはなるはず。彼女がいじめられるのは、部員である俺たちだって気分が悪い。
三人で顔を見合わせた。
「昼休み、集合な」
「っス」
「了解ナリ」
とりあえず、苗字の上履きの上に同じように封筒を乗っけておいた。まあ、内容も簡潔だったし、うん、いいよな。仕方ないわ。
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