あの子は自由人 | ナノ

実は人気の人

 九月の後半になっても、なかなか涼しくなってくれない。それなのに外で体育とか正直きつい。部活で毎日汗水流しているとはいえ、真っ昼間の運動はだれる。仁王なんかはもうだれだれだけど。まあ、俺はバスケもそんなに嫌いではないのでちゃんとやるんだけどさ。


ボコン


後ろから鈍い音、そして女子たちの黄色い悲鳴が聞こえた。なんだなんだと男子全員でそちらを見やれば…。ぶかぶかのヘルメットを押さえながら、ひょいひょいとファースト、セカンド、サード、そしてホームベースを軽々と踏んでいく苗字が、いた。もちろん、校庭にフェンスなんてないから、正式なホームランなんて存在しない。のろのろとホームまで戻ってくるくらいボールが外野を越えたのだ。打たれたチームでさえ、ボールを追うより、苗字に歓声をあげている。
 苗字さんかっこいい!すごい!帰ってきた彼女に女子たちは群がった。えらい人気者である。


 そして、こちらでも。

「苗字さんがホームラン?」
「やっべー、男前過ぎるだろ」
「この間のテニス部ファンへの返しといい、やっぱすげーわ」
「まじ惚れるわー」

 クラスの男どもがきゃーきゃー言っていた。おいおい、女子に男前はないだろ。まあ、女子らしさなんか皆無なんだけどよう。

「うちのマネージャー様は大人気じゃのう」

 そのうちファンクラブとか出来たりして。仁王がニヤニヤ笑いながら言ったことも、あながち冗談ではないような気がして笑うより他なかった。

 

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