柳に、連れてきてくれと頼まれていたので、放課後声をかけたら「どーも」と気の抜けた返事があり、大人しく後ろをついてきた。そして、部室へと案内する。
「荷物はそこに置いといて。あ、そうだ、制服汚れるからジャージ貸すけど」
「大丈夫、持ってきてる」
あ、そう、用意良いのな。と思ってたら赤也が部室に入ってきた。
「結局、マネージャー決まったんスね」
「いや、ただの見学」
「見学?となると先輩たちはもう…」
そう、入部させる気満々である。だけど彼女に聞かせるわけにもいけないので、蹴って口止めする。その様がおかしかったのかよくわからないけど、彼女はちょっと笑って、「ちょっと着替えてくる」と部室から出ていった。
今日の練習は苗字が見学に来ていることもあり、レギュラー陣は試合形式で軽く打ち合う練習を行うこととなった。試合がない時は早く馴染めるように、ルールの説明などをしてくれ、と。ああ、幸村くんも柳も本気なんだなあ…。
始めに幸村くんと柳、次いで柳生とジャッカルが横についてあれがどうだの何か説明していた。フェンスの外の女子らがちょっと騒いでいるのが見えたが、何のお構いもなしだ。
そして、俺が空きになる。真田は他の部員に渇を入れに行ったので、ベンチで一人座る苗字と二人で話すことになる。
でも、どうせルールだとか細かいことは先の二組から聞いてるんだろうし。特に言うこともない。
「やっぱり入る気はねえの?」
そんなことくらいしか言うこともないのである。
「正直、どっちでもいい」
しかし、返って来た言葉は予想の斜め上。どっちでもいいって何なんだろう。どっちでもいいって…。
彼女がちらりと後ろに視線を向けた。こっちを訝し気に見ている女たちがいる。
「テニス部に関わるなって忠告も、今となっては遅いようだし」
しかしそれに別段嫌がっているわけでもなさそうで、ちょっとだけ笑って言った。
「はー、必死で勧誘してくれるし、入っちゃおうか」
そんな適当で良いんだろうか。
まあ、入ってくれるんならどっちにしろ有難いんだけど…うん、まあ、いっか。
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