小萌先生を半強制的に納得させると早足で教室に戻るが、そこには誰もいなかった。
「今日は合同体育か」
外へ出てグラウンドまで行くが、部屋の片付けと小萌先生への説明でなんだか疲れたので体調不良と嘘をつき端の方でサボる事にした。
そこには先客が座っていて、ニヤリと笑いながら片手を振ってくる。
「小萌先生の説教は終わったのかにゃー」
「おかげさまで」
土御門の隣に腰掛け、ふう、と息を吐く。
「ていうかサボってていいのかい土御門くん?チャラチャラしてるくせに留年しますよ不良高校生〜」
「いやぁ僕、怪我してるんですたい。さっき躓いて足首捻っちゃってにゃー」
「土御門が僕とか鳥肌たったんだけど!君の能力ならちょっと捻ったくらい治せるんじゃないの〜?」
「所詮レベル0ですからにゃー?ていうかアヤノもサボってるじゃねーか!」
「私はさっき躓いて足首捻っちゃった☆」
テヘ、と絶妙に憎たらしい顔をするアヤノ。
結局、お互いただやる気がないだけだった。
「そういえばアヤノ、なんで今日ジャージだったんだ?」
「あー。私の制服は何者かによって布切れと化したの……。多分スキルアウトだと思うんだけど、ドアまで壊されててアヤノさんも大変だったわけよ……」
「タチの悪いドッキリだな、どっかで恨みでも買ったのか?」
「こんなか弱い乙女がスキルアウトの恨みを買うように見える!?」
「アヤノならありえそゲフンゲフン。……その様子じゃ怪我はなかったみたいで安心だぜい」
「私が帰った時にはもう荒らされた後だったからね。そう考えると出くわさなかっただけよかったかも。でも数日ジャージ登校なのは辛い……」
しょんぼりするアヤノにドンマイと肩に手を置く土御門。
体調不良で見学をしているはずの二人の騒ぎ声を聞き、
「こら!アヤノ、土御門!」
吹寄制理登場。
「な、なんでございましょう制理ちゃん!」
「何を二人して騒いでいるの!体調不良だと聞いてきたのに……」
「わーん制理ちゃん、私土御門に絡まれてるの!助けてー!」
「言いがかりだにゃー!」
吹寄にキッと睨まれ慌てる土御門。
「……そうだアヤノ、制服ないのよね?」
先ほどの会話が聞こえていたらしい。
「うん、色々あって着れなくなっちゃったから……」
「アヤノが良ければ私の代えの制服貸すけど」
「あ〜……あの、お心遣いは大変有難いのですが……」
「?」
吹寄制理を、いや、吹寄制理の胸を見ながら思う。絶対に、確実に、サイズが合わない。吹寄の胸はアヤノの胸と比べると富士山と平地のようなものだった。
「吹寄の制服なんて胸のないアヤノが着たら……」
「永遠におやすみ土御門」
この馬鹿土御門が余計なことを言う前に一発殴り眠らせておいて、
「汚しちゃったら困るし、2、3日で届くって言われたから大丈夫!ありがとう制理ちゃん!」
ブカブカな制服を着て惨めな姿を晒し三バカに笑われる未来を回避した。
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