「業者さん来るまで暇だしお話でもしてようよ〜。いや、その前に……」
先程からお腹が物を入れろと訴えかけるように音を鳴らしている。お腹に手を当てながら、自分の部屋の冷蔵庫を見に行く。
「そうだ……昨日の帰りに食料買うんだった……」
昨日の私は一方通行に会った事でいっぱいいっぱいで冷蔵庫の中が空なのをすっかり忘れていた。
「一方通行宅には何か食料……」
「……」
無言で立ち上がり玄関を出る一方通行。
コンビニでも行くのかな、と後ろをついていく。
「ジャージ、学校のじゃねェのか」
「あっそうだ!ちょっと待って着替えてくる!」
と言っても待ってくれるはずもなく慌てて着替えて階段を駆け下り追いかける。
「ついてくンのかよ。つゥか、なンでまたジャージなンだよ」
「着替えやすいから!一方通行そそくさと行っちゃうし!」
ついてくるのかという質問は華麗にスルーして、着いたところはハンバーガーショップ。
頼んだ物を受け取り席に着くと、勢いよくハンバーガーを掴み中身を包んでいる紙を除ける。
「いただきまーす!ん〜おいしー!久しぶりに食べた!」
「………」
一方通行は朝から騒がしいアヤノを呆れ気味に見ながらハンバーガーを口にする。
アヤノは向かいに座っている一方通行を見る。
つい昨日まで見ているだけだった存在の人が、あまりにも近くなりすぎて少し戸惑う。
彼は無愛想で言葉遣いも悪いが、なんだかんだ(半無理矢理だけど)泊めてくれたし、(半無理矢理だけど)一緒にご飯も食べてくれる優しい面もある。そう考えるとなんだかドキドキと心臓の音がうるさい。
その時、ジャージのポケットの中から着信音が聞こえた。席を立って外に出る。
画面には“小萌先生”の文字。
怒られる事覚悟で通話ボタンを押す。
「お、おかけになった電話番号は〜……」
「大町ちゃん!今どこにいるんですか!?上条ちゃんから遅刻の事は聞きましたけど、ちゃんと説明してくれないと先生も心配するのですよ!」
「小萌先生ごめんなさい!後でちゃんと説明しますからご心配なく!で、では〜!」
半ば強引に着信を終える。
するとまた着信音がなった。
業者からの、修理に伺ったのですが、という内容だった。
店内に戻り急いで残りのハンバーガーを口につっこみ食べ終える。
「業者さんが早く着いたみたいで行かなきゃいけないから私はお先に!なんか惜しいけど!」
「何が惜しいンだよ。早く行け」
軽く手を振り慌ただしく走っていくアヤノ。
後ろ姿を何となく目で追ってしまうのは、場違いなジャージ姿が目立つからだ。ずいぶんとおかしな奴と関わってしまった、一方通行はそう思いながら残りのコーヒーを飲み干した。
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