午前8時過ぎ。


「うわぁぁぁ!遅刻だ!」


一方通行のベッドを借りて眠った私は一目惚れした人とこれだけ急接近して爆睡なんてできるわけがなく……なんて事もなく一方通行がいる安心感からかぐっすり眠り寝過ごしてしまった。

携帯画面を見て飛び起きたのだが、そうだ。学校に行く前にまずはドアを直さなければ。

遅刻する事を伝えてもらう為、友人に電話をかける。

『大町?どうし……』

「おはよう上条!ちょっと私色々あって午後から学校行くから小萌センセに伝えといて下さい!遅刻の理由はカミングスーン!じゃ!」

相手の返答を聞かぬまま用件だけ伝えて通話を終える。


にしても一方通行は全く目を覚まさない。


「もしもし一方通行さーん……」

寝ている一方通行の顔を覗き込む。
眉間にシワを寄せていない一方通行の寝顔はごく普通の男の子のものだった。


一方通行はとある計画である人達を殺していただとか、レベル5の第1位である一方通行が無能力者に負けただとか、そんな噂を耳にした事がある。

だからといって私にはなんの関係もなかった。私の目の前にいるのは、普通の少年だ。少なくとも、私の目にはそう映っている。


一方通行の寝顔を眺め口元を緩めていると、「……なに見てンだ」と睨まれ先程までの綺麗な寝顔が嘘のように眉間に深いシワが刻まれる。


「お、おはよう一方通行!いやあの扉はどうしようかと思って……!」

「業者にでも頼みゃイイだろ」

「一方通行はどうするの?」

「俺は俺で勝手にする」

「そっか、わかった。んじゃちょっくら着替えてきます!」

「……またくンのかよ」


悪意があって近づいてくる奴は数え切れない程いたが、こんな奴はいつぶりだ。

チッと舌打ちをしてまた目を瞑る。






「…………」

玄関で業者に電話をし、午前中に直せるようにしてもらい部屋に入ると、何という事でしょう。
部屋に入ってすぐの所にかけてあった制服は、着れないほどボロボロになっているではありませんか。昨日はそれどころじゃなくて気がつかなかった。

「どこの匠の仕業だよ!」

思わず一人でツッコミを入れる。

倒されたドア。キッチンより少し奥までは床は汚れ壁も凹んでいる所がある。

溜め息をつきながらも無事だった指定ジャージに隠れて着替え、一方通行のところに戻る。



「ジャージかよ」

「制服は全滅ですボス……」

「誰がボスだ」



バイトがクビになった直後にドアを壊され制服もボロボロ。不幸の連発だがその代わりに一方通行に近づけたわけだから、これは寧ろプラスだとポジティブに考える事にした。



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