私などいないかのようにスタスタと歩く彼。途中で別れる事もなく同じ道を歩き、我が家はもうすぐだ。
「ま、まさか一方通行がストーカー……」
「そォかここでミンチにされるのを選ぶんだなァ?マゾ女」
「スイマセン冗談です!ていうか私はマイホームに着いたのですが」
「………」
その場に立ち止まり黙り込む彼に、まさかと思うが。
「あ、あれれ……」
着いたのは同じ階。しかも私は彼より手前の隣の部屋だった。
運命だ!
……なんて思うよりもまず。
「ド、ドアがない!?」
「なンだァ?」
二つのドアが綺麗さっぱりなくなっていた。
「えっなんで!?どうしたらドアがなくなるの!?」
「さァな」
「あ、あははは……って笑ってる場合じゃないよ私!ていうか平然としてるけど一方通行の部屋凄いことになってるよ!?私の部屋もだけど!」
思い切りテンパるアヤノを放置しドアのない自身の部屋へ入っていく一方通行。
「ま、待て待てコラァ!さっき絡まれてた一方通行的には何か心当たりがあるんじゃないかな!?」
一方通行宅へ乗り込むと行動が早い、既にソファーに横たわっている。
「これやったの、スキルアウトじゃないの!?」
「そォかもなァ」
「私的にはおっちょこちょいなスキルアウトさん達が間違って私宅をぶっ壊しちゃった的な落ちだと思うんですけども!」
「だったらどォすンだァ?」
「……大町アヤノと申します」
「あァ?」
「泊めてくださいませ!」
うわ、缶コーヒー飛んできた。
「ストーカーってのはこえェなァ、気をつけねェと」
「危ないじゃんか!ていうかストーカーじゃない!」
ドアのない部屋で一人で寝るのは流石にこわい。
一方通行の寝転がるソファーの前に正座する。
「こんな時間に友達にお願いするのも迷惑かけちゃうし、なによりもうバス出てないし……でも一人であの部屋で寝るのは流石にこわいので……一晩だけ泊めさせて下さい……」
さっきまでテンションが高かったはずが、急に不安そうな表情を浮かべるアヤノに一方通行は大きく溜め息をついた。
「……勝手にしろ。涎垂らすンじゃねェぞ」
一方通行の言葉にすぐさま表情が明るくなる。
「(なにやってンだかなァ)」
前にも似たような事があったような。
デジャヴを感じながら一方通行は目を閉じた。
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