私は彼の名前を知っていた。
彼が初めてコンビニに来た時、あの容姿ですぐにわかったのだ。



ふと名前を呼ぶと、彼は私の方を向く。


「……なンで俺の名前知ってンだァ?」
眉間にシワを寄せ、私に問う。



「見たらわかるよ、さっきの能力でもね」

「……なンでさっきつっこンできた」

「いや、あのー……誰かが襲われてるのかと思って、つい」

「助けようってかァ?」

「ええ、まあ……あっさり捕まったけど……」

「ハッ。バカみてェに正面から突っ込ンでくりゃァ私も襲って下さいって言ってるようなもンだろォが。無謀な事しねェでさっさと帰りゃ良いモンをよォ。弱いくせに善人気取ってンじゃねェよ」


バカにしたように笑う彼。


「ボロクソ言うね!?でも、それって心配してくれてるって事だよね!」

「ハァ?あの言葉のどこが……」

「か弱き乙女は危ない事をするんじゃないよって事でしょ!」


呆れた顔で、くだらねェと吐き捨て歩きだす彼を、ここで逃すもんかと追いかける。


「一緒に帰りましょう!」

「ハァ?テメェに付き合ってる暇なンざ……」

私の顔を見てまた眉間にシワを寄せる。


「さっきの店員か」

「……え、まさか顔覚えてくれてたの!?」

「コンビニでレンジ爆発させるやつなンざ嫌でも目につくだろォが」


ですよね。


「いやぁ〜あれは私もなんでああなったのか……それも一度じゃないし……」

「そンでクビかァ?」

「お察しが良い……」

「つーかよォ、人の事ジロジロ見てくっからだろォが」

「えっ、バレてた!?」

きゃー恥ずかしいと顔を覆い隠すアヤノを完全無視しスタスタと歩く一方通行。




「実は一方通行というのはどんな人物かと気になっていたのだよ、ていうかどこまで一緒なんだろうね」

「ついてきてンじゃねェのか」

「ストーカーじゃないってば!」





歩く方向は、どこまでも一緒だった。



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