私が知らされた日から結婚式までは1ヶ月もなかった。

勝手に作られていた招待状。

会場の下見さえしていない。

私の左手の薬指にある婚約指輪。

それは一方的に送られてきた物で、メッセージカードすらついていなかった。

そう、私は自分の結婚相手が誰なのか分からないままだった。

まさか結婚式当日になっても、分からないままだとは思いもしなかった。


 ◇◆◇


招待客のざわめきが私のいる控室まで聞こえてくる。

招待されたのはマフィア界の、ボンゴレにとっての重鎮ばかりで、私の友人等は一人もいない。


――誰にも祝福されない結婚。


覚悟はしていたものの、こんなにも辛いとは思わなかった。

私達名字ファミリーが人質になっている以上、相手がどんな人であろうとも、離婚するなんて事は出来ない。

もしかすると結婚相手も何か“大切なモノ”を守る為に、ボンゴレが用意した私と無理矢理結婚せざるをえないのかもしれない。

そうだとすれば、それこそ絶望的だ。

相手から離婚を言い出す事は決してないだろう。

それに相手もマフィアなら正妻の産んだ跡取りが必ず必要。

私は愛してもいない人の子供を産み、マフィアの跡取りとして育てていかなければない。

でも、もしかしたら・・・。

まだ見ぬ相手だけど、愛せるかもしれない。

そんな僅かな期待を抱いていた。




所詮は徒花の物語





コンコンと響くノックの音。

結婚式の時間が迫っていた。




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