言われた言葉を理解する間もなく、話は続いていった。

結婚式の日取りや会場。

招待客の名簿。

挙句の果てに、当日に私が着るウェディングドレスさえ決められてしまっていたた。

先日まで療養していたお父様に、“政略結婚”について話す余裕さえなかったせいで、今日初めて聞いた“結婚”の話にお父様は唖然としていた。


「ちょ、ちょっと待って下さい!・・・結婚とはどういう・・・・・・・」


淡々と決まった事項を述べていた幹部の人は、お父様の言葉に呆れ返った様な表情を見せた。


「・・・話してなかったのか?」

「・・・・・・・」


そう言葉を私に投げ掛けてきたが、私はただ黙ってうつ向くしか出来なかった。

マフィアの抗争に巻き込まれて亡くなったお母様。

そんな事があったせいか、お父様は私にはマフィアと関係無い人と一緒になってほしいと口癖の様に言っていたのだ。

そんなお父様に、どうしても言う事が出来なかった。

黙り込んだ私に溜め息を吐いた後、幹部の人は口を開いた。


「―・・・君達のファミリーの“平穏”の代償がコレだ」


そう言って、テーブルの上に置かれた私の結婚式について書かれた書類を、コンコンと指で小付いた。


「・・・っ、そんな・・・・。本当なのか名前?!」


真っ青な顔をしたお父様が私の両肩を掴み、問い正す。そんなお父様に、私は黙ったまま頷くのが精一杯だった。


「もういいか?話を続けさせてもらう」


こんな下らない話に時間を掛けていられないとばかりに、淡々と結婚式について話始めた。

そんな話は私の耳を通り過ぎるだけで、ただひたすら拳を握り絞めて時間が過ぎるのを耐えた。




揺らぐのはい夢





幹部の人が帰った後、この部屋にお父様の押し殺した様な泣き声が残された。




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