今、私は純白のドレスを身に纏い佇んでいる。

本来ならば祝福を受け幸せが満ち溢れている場所だというのに、この部屋にはそんな空気は未塵もない。


お父様もファミリーの皆もうつ向き、重苦しい雰囲気だった。


まるで葬式の様だ…、そう他人事の様に思ってしまった。


 ◇◆◇


あの日、私に差し出された紙は真っ白な婚姻届だった。

ボンゴレにとって都合の良い相手との政略結婚か私達のファミリーの命。

大切な人達の命が助かるというのなら、これから先の私の人生等どうでもよかった。

白紙の婚姻届に私の名前を震える手で何とか書き終えた時、監視付きではあったものの、何事もなかったかのように私達は帰された。

ボロボロになった屋敷。

傷だらけのお父様や部下達。

さっきの婚姻届の事等考える暇もなく、私はお父様の代わりにその後始末に追われる日々が続いた。

そんな日々が落ち着いたある日、ボンゴレ本部の幹部が数人、屋敷を訪れたのだった。

幹部の人達が言うには、私達のファミリーの裏切りは内々で処理し、その事実は限られた幹部達しか知らないらしい。

表向きではあるが、私達ファミリーが今まで通りでいられる事に少なからず私は安堵した。


私だけでなく、隣に座ってボンゴレ本部の幹部達の話を聞いていたお父様もほっとした表情を見せた。

そんな空気も、次に発せられた一言で壊れてしまった。


「・・・ところで、君の結婚の日取りが決まった」




氷点が生える音





“政略結婚”

いきなり現実を付きつけられた。




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