叫んだ私に黙れと言わんばかりに、銃が突き付けられる。

額に感じるヒンヤリとした感触に、冷や汗が流れ始めた。


「―…そこまでにしておきなさい」


凍りつく様な部屋の雰囲気の中に優しい声。

その声に促される様に、私に突き付けられていた銃が下ろされた。


「すまないね…」


申し訳なさそうに眉を下げて微笑むその顔を見て、ようやく私は息が出来たような気がした。

その老人の顔を私はよく知っていた。


「9代目…」


ボンゴレ主催のパーティーで、何度か挨拶をさせて頂いた事があったからだ。

しかし、9代目と共にこの部屋にやって来た幹部であろう人達は蔑むような視線で私を見下ろしていた。


―『裏切り者』


口にせずとも、彼等の視線が、目がそう言っていた。



「父が9代目を裏切るなんて…、そんなはずが……」

「あぁ、分かっているよ」



9代目の言葉にホッとしたのも束の間、9代目の表情が次第に曇っていく事に気付いてしまった。

唯一9代目だけが、父の事を信じてくれているのだ。




「君の父親は騙され利用されたという事が分かっている。

だが、

それでも結果的にボンゴレを裏切ったという事実は変わらない」




9代目の傍に控えていた幹部であろう人が、そう言葉を発した。

マフィアだというのに義理や人情に弱いお父様。

そんなお父様を部下達も心配しながらも慕って付いてきてくれていた。


(あぁ、心配していた事が起こってしまったのね…)


マフィアの中にはお父様の様な人柄を馬鹿にする者や、利用しようと画策する者がいる事など分かり切った事だった。

私だけでなく部下達も何度も口煩く言っていたけど、「大丈夫だ」と笑顔で答えるだけだった。

その根拠のない言葉を私だけでなく、お父様や部下達もいつの間にか信じてしまっていた。


その結果が、今私が置かれているこの状況。


「しかし、名字ファミリーは今までボンゴレによく仕えてきてくれた事もまた事実だ」


その言葉に僅かながら希望が見えて、私はうつ向いていた顔を上げた。

本来ならば、ファミリーを潰されて、皆殺しでも仕方のない事。

けれど、最悪な事態は免れるかもしれない。

そんな私に一枚の紙が差し出された。




沈むに太陽を探す





震える指でその紙を受け取り、目を通していく。

そしてその紙が何なのかを理解した瞬間、私の思考回路全てが停止した。




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