与えられた私室で私は紅茶を飲みながら、ゆったりとした時間を過ごしていた。 結婚式から半月程経ったが、私の夫であるザンザス様の姿をあれから一度も見ていない。数日間は緊張の中で過ごしていたけれど、今はもう彼はここに来ることはないだろうとそう思っている。 それに、言葉は悪いが私は今『軟禁状態』にあると言ってもいい。 最初は気付かなかったが、どうやらこの屋敷はヴァリアーの別邸らしく、必要最小限の人しかいないし、私が自由に行き来出来る部屋も限られている。 ――『妻』ではなく『人質』という言葉がピッタリすぎて、なんだか笑いが込み上げてくる。 まぁ、扱いがどうであれ、私がザンザス様の『妻』であるという現実からは逃げられやしない。 紅茶を飲み干し、次は何をして時間を潰そうか思案していると、コンコンとドアをノックする音が聞こえきた。 時が止まった剥製 「奥様、お客様がおみえです」 小さく溜め息をついてから、返事をして立ち上がる。 私に唯一与えられた『妻』としての仕事がこれから始まる。 →next [*前] | [次#] |