この場所に不釣り合いな雰囲気を漂わせた、黒い服に身を包んだ集団。 ヒィッと招待客の誰かが小さな悲鳴を上げた。 その集団の中で、誰よりも威圧感を発している体格のいい黒髪の男の人。 その人の真っ赤な瞳が真っ直ぐに私を射抜く。 ビクッと震える私の体。 恐怖感に襲われて目を逸らしたくても、そうする事が出来なかった。 カツカツとブーツを鳴らしながら、その男の人は私の方へと歩き出す。 「・・・ザンザス」 「チッ、カス共が」 ザンザスと呼ばれた男は9代目に挨拶をするどころか舌打ちをして、視線さえ合わそうとはしなかった。 「へぇ〜、この女がねぇ・・・」 「そんなにジロジロと女の子を見るもんじゃないわよ」 「ハァ、くだらねぇ・・・」 「ミーは早く帰りたいんですけどー」 ティアラを頭に乗せた金髪の子を筆頭に、黒い服に身を包んだ男性達が次々と口を開いていく。 まるで私を品定しているかの様な視線。 ざわつき出した雰囲気の中、紅い瞳の男性は止まっていた足を再び動かし始めた。 鋭い視線は私を貫いたままで、一歩、また一歩と私に近づいてくる。 けれど、私の直ぐ目の前に来た時、その視線が私の背後にいる人物へと移った。 ガタガタッと後ろから音がしたが振り返る勇気など私にはなく、それどころか、あの視線から逃れられた事に少なからず安堵した。 そして、体中から力が抜けてしまいその場に座り込んでしまった私にお父様が慌てて駆け寄ってきてくれた。 ギュッと抱き締められて、漸く息が出来たような気がする。 お父様の腕にしがみつきながら、ザンザスがこの場に来た意味を必死に考えた。 夢は終わり、 リアルはここから ふと視線を上げれば、彼の小さくなっていく背中が見えた。 そして、私の視界の隅にコロコロと転がっていくシルバーリンクが入る。 本当は彼が来た時点で気付いてた。 答えなんて、1つしかないじゃない…。 →next [*前] | [次#] |