vol.03


「すんませんでしたっ!」


友達と話込んでいた俺は、今日のミーティングをすっかり忘れてしまい、気付いた時には既に集合時間は過ぎていた。

全速力で教室から部室まで走り、ドアを開けた瞬間に速攻で頭を下げた。

真田副部長のゲンコツがくるだろうと、目を瞑り歯を食い縛る。

けれど、いくら待ってみてもゲンコツが落ちてこない。

目を開けて、恐る恐る顔を上げると、目をパチパチさせている名字先輩の姿がそこにあった。


「うわぁっ?!」


予想外な人の存在に驚いて、思わず叫んでしまう。


「これからミーティングを始めるよ。その件で名字さんにも来てもらったんだ」

「・・・ッス」


カッコ悪い姿を名字先輩に見られた事が恥ずかしくて、俺は赤くなった顔を隠すように俯いた。


 ◇◆◇


「「「合同合宿?!」」」

「そう、それで名字さんにお願いがあるんだ」

「え?」


柳先輩に渡されたプリントには、【合同合宿について】と書かれていた。

全国から選ばれた学校のテニス部で、どっかの島で一緒に合宿をするらしい。

それにどう名字先輩が関係するんだ?

頭を傾げる俺をよそに話はどんどん進んでいく。


「いつもレギュラーだけで合宿をする時は、食事や洗濯とか身の回りの事は業者に頼むんだけど、今回はそうもいかないみたいで・・・」


確かに、テニス部全員参加の合宿ではマネージャーもいないし、1年が身の回りの事をする決まりになっている。

レギュラーだけの時は、合宿所の人がやってくれていた。

しかし、今回の合宿では全て自分達だけでしなければならないらしい。

洗濯はまだいいが、問題は食事だ。

このメンバーが作った飯なんて・・・想像もつかない。

つーか、食いたくねぇ・・・。



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