vol.01


絶えず聞こえる蝉の鳴き声、照り付ける太陽。

空は真っ青に晴れ渡り、入道雲が見える。

もうじき始まる夏休み、クラスメート達は夏休みの予定や計画について盛り上がっている。

本来なら中学3年生の夏休みは高校受験に向けて塾や勉強に精を出すところだけど、殆どの生徒はそのまま上に上がるのであまり受験は関係ない。

今日で期末試験も終わり、その解放感もあって教室内はいつも以上に騒がしい。

そろそろ帰ろうと荷物を鞄に積めていると、クラスメートの柳君から声をかけられた。


「名字、これから何か予定はあるか?」

「ううん、後は帰るだけだけど」


柳君にちょっと付き合ってもらいたいと言われ、特に予定もなかった私は鞄を持って、柳君の後を付いていていった。


 ◇◆◇


着いた先はテニス部の部室。

閉めっぱなしだったので、ドアを開けると部室内は何とも言い難い空気が漂っていた。


「すまない、今窓を開けよう」


ちょっと眉を潜めてしまった私を見て、柳君は苦笑しながら窓を開けていく。

籠っていた空気が風に浚われていった。


「今日は部活はないの?」

「今日は夏休み中の練習についてのミーティングのみだ」


柳君が扇風機を付けてくれたが、暑くて汗が首筋を伝っていく。柳君の額もうっすらと汗が・・・。


「何か飲み物を買ってこよう。名字は・・・ミルクティーで構わないか?」


私も一緒に行こうとしたが、やんわりと断られてしまった。

それにしても、さすが柳君。

私がミルクティーが好きでとよく飲んでいる事を知っていたようだ。

渋る柳君に強引に私の分のジュース代を渡してから、柳君を見送った。



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