vol.08


夕食後、早々にコテージへと戻った者もいれば、雑談する者、自主トレをする者と各自思い思いに過ごしていた。


「なぁ、ワイも遊びに行きたいわー」

「誰のせいで、俺等が後片付けさせられてると思っとんねんっ!」

「真面目にやったらこんなんすぐに終わるやろ」


騒ぎを起こした罰として四天宝寺のメンバーが後片付けをしていた。(連帯責任ということらしい…)

少し離れた場所では、手塚や跡部といった各校の部長が集まり、今後について話し合っている。

聞くつもりはないけれど、遠山を筆頭に四天宝寺メンバー達の声が大きくて、嫌でも会話が耳に入ってくる。

けれど、急に四天宝寺達が静かになってしまった。それはそれで気になってしまい、その場にいたメンバー達はつい視線を向けてしまう。

皆の視線の先にいたのは遠山だった。彼は黙ったままじっと自分の両手を見つめている。


「…急にどないしたん?」

「拾い食いでもしたんとちゃうか?」


途端に沸き上がる笑い声。そんな中で、遠山がポツリと呟いた。


「……柔らかかったなぁ」


さっきまでの騒がしさが嘘のように、再び静寂が訪れ、その場にいたメンバーは固まってしまっていた。

相変わらず遠山の視線は自分の両手で、呟きを聞いてしまったメンバーも思わず遠山の両手を見つめてしまう。

彼等の脳裏に浮かぶ先程のシーン。

何が柔らかかったのか、なんて聞かなくてもわかってしまう。


「なぁ、何であんなに柔らかいん?」


静寂の中、首を傾げながら遠山が再度口を開いたのと同時に、辺りは一段と騒がしくなった。




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