何もなかったかの様に流してくれればよかったけど、中には動揺を隠しきれない人もいて、私は片付けを終えると早々に管理小屋へと戻った。 いや、逃げ帰った。 「大丈夫、見えなかったよ・・・多分」と女の子達が言ってくれたけど、始めは何の事を言っているのかよく分からなかった。 あまりのスピードと揺れに、自分がスカートを履いているという事をすっかり忘れてしまっていたからだ。 そのうち振り落とされるんじゃないかと、そんな事で頭が一杯になっていた。 四天宝寺の白石君にはお礼を言うどころか、逆に謝られてしまうし、本当に今日は踏んだり蹴ったりな一日だったと思う。 「あんまり気を落とさないで」 「わかってはいるんだけど、ね」 同室の女の子、橘さんにそう言われても苦笑いしか出てこない。 この管理小屋にいる女の子は6人。 丁度2人部屋が3室あったので、青学の女の子達、あの私服の女の子達、そして私と橘さんという部屋割りになった。 まだ就寝するには早い時間だけど、取り合えず私達は着替える事にした。 私もいつまでも制服のままというのは窮屈だったし・・・。 「・・・え?」 誰かが部屋まで運んでくれ異様に大きいスーツケースを開けたんだけど、中を見て唖然としてしまった。 「どうした・・・えぇっ?」 橘さんもスーツケースの中を見て、唖然としている。 (いやいや、私は合宿の手伝いに来てるんであって・・・) 中に入っている大半の服はいかにも“お嬢様”が着そうなワンピースとか(しかも高そうだ)、どう見ても合宿とはかけ離れたリゾート向けの服ばかり。 確かに可愛い服なんだけど、場違いもいいところだ。 そりゃ、誰だってこんなサバイバル生活を送るとは思っていなかったけどさ、いくらなんでもこれは・・・。 「篠山さん・・・」 脳裏に浮かぶのは、篠山さんの笑顔。 合宿の手伝いだと分かっているくせに、あえてこの服を用意したんですね・・・。 そこまでして、私にご飯作り以外をさせないつもりなんですか? 「か、可愛い服ですね」 私の隣には、苦笑いの橘さん。 うん、そうとしか言いようがないよね・・・。 →next |