いつの間にか私はベッドで寝てしまっていた。 そのおかげで随分と体は楽になったけれど、窓から差し込む日差しは茜色で、私は急いで部屋を飛び出した。 「あっ!ねえちゃんや!」 小屋から出た瞬間、大きな声に呼び止められる。 「なぁ、なぁ、もう大丈夫なんか?しんどないんか?」 何故か私の手を握り締めて、顔を覗き込んでくる男の子。 ――『四天宝寺の白石と遠山が名字さんを助けてくれたんだ』 『白石は腕に包帯を巻いてて、遠山は…凄く元気な男の子だよ』 そう言っていた幸村君の言葉を思い出した。 四天宝寺といえば侑士君の従兄弟、忍足君が行ってる学校。 その男の子が着ているジャージを見てみれば、忍足君と同じデザインの物だった。 「もしかして・・・私を助けてくれた、遠山君?」 「ワイの名前、知っとったんや!」 少し悲しそうだった遠山君の瞳が一瞬にしてパアッと輝きだし、本当に嬉しそうな笑顔へと変わる。 「ねえちゃん、飯作るん上手いんやろ?」 「えっ?」 「あんな、ワイおにぎりが食べたいねん!ねえちゃん作ってぇや」 確かに料理は人並みに出来るけど、“上手い”なんて一言も言った覚えがないんですが・・・。 というか、おにぎりって料理に入るのだろうか? いまいち話が分からない私をよそに、遠山君は私の手を握ったまま走り出そうとする。 「ちょっと待って・・・」 「あぁーっ!!忘れとった!」 遠山君は大声で叫んだ後、くるりと私に向き直って、ヒョイと私を肩に担いで走り出してしまう。 「えぇーっ?!」 「ねえちゃん、走ったらあかのやろ?」 「いや、そういうワケじゃ・・・って、止まってー!!」 私が叫んでいる間にも、どんどんと小屋から遠ざかっていく。 いやいや、そんな事よりも・・・、 「私、スカート履いてるんですけどぉおぉぉっ!」 お見苦しいモノが見えてしまったら、ごめんなさい。 この場合・・・不可抗力です。 →next |