vol.04


いつの間にか私はベッドで寝てしまっていた。

そのおかげで随分と体は楽になったけれど、窓から差し込む日差しは茜色で、私は急いで部屋を飛び出した。


「あっ!ねえちゃんや!」


小屋から出た瞬間、大きな声に呼び止められる。


「なぁ、なぁ、もう大丈夫なんか?しんどないんか?」


何故か私の手を握り締めて、顔を覗き込んでくる男の子。


――『四天宝寺の白石と遠山が名字さんを助けてくれたんだ』

  『白石は腕に包帯を巻いてて、遠山は…凄く元気な男の子だよ』


そう言っていた幸村君の言葉を思い出した。

四天宝寺といえば侑士君の従兄弟、忍足君が行ってる学校。

その男の子が着ているジャージを見てみれば、忍足君と同じデザインの物だった。


「もしかして・・・私を助けてくれた、遠山君?」

「ワイの名前、知っとったんや!」


少し悲しそうだった遠山君の瞳が一瞬にしてパアッと輝きだし、本当に嬉しそうな笑顔へと変わる。


「ねえちゃん、飯作るん上手いんやろ?」

「えっ?」

「あんな、ワイおにぎりが食べたいねん!ねえちゃん作ってぇや」


確かに料理は人並みに出来るけど、“上手い”なんて一言も言った覚えがないんですが・・・。

というか、おにぎりって料理に入るのだろうか?

いまいち話が分からない私をよそに、遠山君は私の手を握ったまま走り出そうとする。


「ちょっと待って・・・」

「あぁーっ!!忘れとった!」


遠山君は大声で叫んだ後、くるりと私に向き直って、ヒョイと私を肩に担いで走り出してしまう。


「えぇーっ?!」

「ねえちゃん、走ったらあかのやろ?」

「いや、そういうワケじゃ・・・って、止まってー!!」


私が叫んでいる間にも、どんどんと小屋から遠ざかっていく。

いやいや、そんな事よりも・・・、


「私、スカート履いてるんですけどぉおぉぉっ!」


お見苦しいモノが見えてしまったら、ごめんなさい。

この場合・・・不可抗力です。




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