vol.03


「ハァ・・・やっと、着いた・・・」

「名字さん、今水を持ってくるから・・・」


ようやく自分の足で合宿場所に着いたものの、私だけが息も絶え絶えの状態。

その上、サポートするどころかサポートされてしまっている・・・。


「木陰で休んでいるといい・・・」

「俺達は他の皆とちょっと話をしてくる」


そう皆に言われて、座って木の幹に持たれかかる。

この合宿に参加している選手だけでなく、マネージャー達も忙しなく動いているというのに、私はこんな状態。


(情けないなぁ・・・)


そう思いながら、私は目を閉じた。


 ◇◆◇


手元にある食料で昼食をとる事になったのだが、何故かそこには立海テニス部の姿がなかった。


「跡部、立海のメンバーが何処に行ったか知らないか?」

「ん、あぁ・・・大方名字の所に行ってるんだろう」


――名字

それは聞き覚えのない名前だったが、ふと思い出したのは立海メンバーの中に一人女子の姿があったという事だった。


「どこか怪我でもしたのか?」
砂浜で確認を取った時にはその様な話は聞いていなかったが、合宿場所に来るまでの間に怪我をする可能性がないわけではない。

そう思い再度尋ねてみたのだが・・・、


「いや、そういうワケじゃねぇと思うが・・・」


跡部は少し考える素振りを見せて言葉を濁す。


「忍足から少し聞いただけで、俺も全てを把握してるワケじゃねぇ」

「それはどういう意味だ?」

「詳しい話なら立海の連中から直接聞いた方がいいだろう」


そう答えた跡部の視線の先には柳の姿があった。


「柳、少し話を聞きたいんだが・・・」

「すまない、手塚。その前に管理小屋の鍵を借りたい」


俺に断りを入れた後、柳は近くに座っていた橘の妹に鍵を借り、足早に去って行ってしまう。

そして、5分程経って戻ってきた立海のメンバーによって名字の事情が合宿参加者に説明されたのだった。




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