「う"・・・気持ち悪い・・・」 部屋に戻って暫くすると、船が揺れ始めた。 嵐に遭遇し天気が荒れているため多少の揺れは仕方ないし、そんなに長くは続かないだろうと気楽な事を思っていた。 しかし、揺れはおさまるどころか次第に激しくなっていく。 頭はクラクラするし、さっきお腹一杯食べたのもあって吐き気もする。 いつ吐いてもいいように、私はトイレに籠りっぱなしだ。 地面が恋しくて仕方ない。 そんな中、 ――ドンッ と今までで一番大きな揺れが襲い、停電までしてしまった。 「・・・嘘・・・でしょ・・・」 私の頭の中に最悪な2文字がよぎる。 幸いなことに停電したのは一瞬だったのだが、船が明らかに傾いているのが分かる。 それに――船が止まっている。 「もしかして、船が座礁した・・・?とにかく皆と合流しなくちゃ」 部屋から出る為にドアへ向かおうとした瞬間、再び停電してしまった。 辺りは真っ暗。 そして、一向に治まらない頭痛と吐き気。 なんとか立ち上がろうとするが、足に力が入らない。 直ぐに座り込んでしまう。 不安と緊張でパニックになりそうな自分が情けなく思えてしまう。 ◇◆◇ 「全員いるっ?」 「・・・名字がいないっ!」 「・・・っ?!」 嵐で揺れる甲板、雨が容赦無く俺達を打ち付けてくる。 どの学校も部長が先頭に立ち、部員を先導していた。 雨で視界が悪く、声を張り上げて全員いるか確認してみれば、最悪な返事が返ってきた。 「幸村、俺が名字を探してくる!お前は皆と先に行けっ!」 「そんなワケにはいかないっ、俺が・・・」 「待て、お前等っ!!入れ違いになったらどうするつもりだっ!」 「跡部・・・」 名字さんを探しに再び船内に戻ろうとした時、跡部に止められてしまった。 「他にもまだ船内に残ってる奴がいる。・・・それに、もう他の奴等が探しに行った。この船も直ぐに沈むワケじゃねぇ、時間はまだある。――落ち着け」 「・・・・・・・・あぁ」 俺は名字さんがいない事にすぐ気がつかなかった。 自分の不甲斐無さが許せなくて、自分自身に対して怒りが沸き上がってくる。 「跡部、俺達も救命ボートを出すのを手伝おう」 「あぁ、頼む」 「・・・っ、幸村部長!」 「名字さんが戻り次第、直ぐ出せるように準備するんだ」 今の俺には、彼女が無事でありますように・・・と祈る事しか出来なかった。 →next |