切原君の遅刻で出発時間は遅れたが、全校の集合時間前になんとか集合場所に着くことができた。 「えっ、まさかこの船?」 「スッゲー!」 「まぁ、跡部と榊先生だからな」 集合場所である港で私達を待っていたのは、テレビでしか見たことがないような豪華客船だった。 ポカーンとした表情で、殆どの生徒がその豪華客船を見上げている。 「な、なんで名前ちゃんがおるんっ?!」 そう言いながら駆け寄って来たのは、私がこっちで目覚めてから初めて出来た友達、 ――忍足侑士君だった。 「立海テニス部の手伝いと、・・・体力作りを兼ねて?」 「疑問形なんかい!・・・って、ホンマに大丈夫なんか?」 侑士君は私が病院で意識を取り戻す前の事や、入院中の私の事を知っているせいか、私の両肩を掴んでとても心配そうな表情で私の顔を覗き込んだ。 「名字さんには絶対に無理はさせないよ」 いつの間にか私の横にいた幸村君が、私の変わりにそう答えた。 幸村君の後ろにいた立海メンバーも幸村君の言葉に頷く。 「・・・ホンマやな」 そう確認する様に尋ねた侑士君に、幸村君は笑顔を返す。 侑士君は険しい表情で幸村君達をじっと見つめた後、いつもの表情に戻った。 「篠山さんともそう約束したしね」 「さよか・・・、それにしても、よう篠山さんが許したなぁ」 侑士君は勿論の事、立海メンバーも篠山さんのことをよく知っている。 侑士君の実感が込もったその言葉で、私達はまたあの大きな荷物――スーツケースの事を思い出し苦笑するしかなかった。 →next |