「名前ちゃんおはよう、…ってあら?何かあったの?」


朝。いつもの様にリビングに行くと、母が私の顔を不思議そうに見ていました。

“何か”ならあの高校に通うようになってから毎日あったけれど、わざわざ母に言う事でもありません。

おはようございます、と返事をしていつもの定位置へと腰を下ろした。

黙ったまま朝食を食べ始めた私に、母は少し困ったような表情をしていたけれど、それには気付かないフリをしてしまいました。

なんてことはありません。

ただ、昔の―私が幼稚園に通っていた頃の夢を見ただけなのです。

その頃の私はレースやリボン、ピンク色等如何にも女の子らしい物が大好きでした。

両親の『名前は可愛い』という言葉も鵜呑みにしていました。親が我が子を可愛いと思うのは、自然な事だと今では理解済みですが…。

けれど、大きくなるにつれて現実は容赦なく私を傷付けました。

そんな事を思い出して、私は母に気付かれないよう溜め息を吐いた。





私が昔の夢を見たのはいわゆる“虫の知らせ”というモノだったのだろうか?

トラウマの原因ともいえる人に出会う事になるとは、今の私は知るよしもなかったのだった。



→next



- 16 -
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -