「名前ちゃんおはよう、…ってあら?何かあったの?」 朝。いつもの様にリビングに行くと、母が私の顔を不思議そうに見ていました。 “何か”ならあの高校に通うようになってから毎日あったけれど、わざわざ母に言う事でもありません。 おはようございます、と返事をしていつもの定位置へと腰を下ろした。 黙ったまま朝食を食べ始めた私に、母は少し困ったような表情をしていたけれど、それには気付かないフリをしてしまいました。 なんてことはありません。 ただ、昔の―私が幼稚園に通っていた頃の夢を見ただけなのです。 その頃の私はレースやリボン、ピンク色等如何にも女の子らしい物が大好きでした。 両親の『名前は可愛い』という言葉も鵜呑みにしていました。親が我が子を可愛いと思うのは、自然な事だと今では理解済みですが…。 けれど、大きくなるにつれて現実は容赦なく私を傷付けました。 そんな事を思い出して、私は母に気付かれないよう溜め息を吐いた。 私が昔の夢を見たのはいわゆる“虫の知らせ”というモノだったのだろうか? トラウマの原因ともいえる人に出会う事になるとは、今の私は知るよしもなかったのだった。 →next |