「Stop !!」 俺に背を向けた梵は、大声でそう叫んだ。 まだ冷や汗は止まってはいないが、梵の意識が俺から離れた事に一安心だ。 「「「…………」」」 流石に今度は梵の存在に気付いてくれたらしく、ピタリと皆の動きが止まったのはいいけどさ。 あれ、いたの? そんな視線が梵に向けられているなんて事まで、気付きたくなかった・・・。 俺が気付くくらいだから、本人が気付かないはずもなく、梵から黒く重苦しい空気が漂ってくる。 「・・・フギュアァァッ!」 「おいおい、いい加減諦めなよ」 「キキッ」 「いやいや、そっちこそいい加減に名前チャンを離してくんない?」 再びカオスと化したこの状況に、俺は死の予感さえしてきた。 いや、もう涙まで出てきたよ・・・ハハハ。 黙ったままうつ向いて肩を震わせる梵。 長年一緒にいるからわかる。 うわぁ、これはマジで怒ってるよ。 「・・・You rascal!」 梵が一番嫌いな事は“無視”される事だ。 それをされた梵が平然としていられるわけもなく、ぶちギレてカオスの中へと飛び込んでいった。 「・・・・・ハ、ハハ」 より混沌となったこの状況に、めまいがした。 ◇◆◇ 正気に戻った時、俺達の前にいたのは小十郎だった。 あれ?どういう事? 何故か正座させられている俺達の前で仁王立ちで説教をしてる。 頭に痛みを感じて触ってみれば、たんこぶが・・・。 名字さんの泣き声をBGMに、小十郎の説教は日が暮れるまで延々と続いたのだった。 あぁ、なんて可哀想な俺・・・。 →next |