「Shit!!まだ見つかんねぇのかっ!」 「す、すいやせんっ!」 連絡が入り次第直ぐに出られる様にと、携帯を握り絞めながら、校舎を歩き回っていた。 「・・・見つけたら、タダじゃおかねぇ」 この俺が毎日色々と気に掛けてやっているというのに、あの女は全く俺に慣れようとしない。 ―『政宗とずっと一緒にいたいな』 過去に付き合ってきた女達が、よく言っていた言葉。 だから、その通り学校にいる間はずっと側に置いてやっているというのに、あの女は一向に喜んでいる様子を見せない。 脅えた様な表情しか見せない事にも腹が立つが、それどころか、今日は逃げ出しやがったっ!! あんなにも可愛いがってやってるのに、どういう事だ?! 思わず手に力が入り、握り締めていた携帯がミシミシと音をたてた瞬間、着信音が鳴り響く。 「何処にいたっ!?」 『あ〜梵?名字さんを見つけたんだけどさぁ…』 電話の相手は成実。 居場所を聞き出そうとしても、成実は何故か言葉を濁して言おうとしない。 そんな成実に苛立ちが募る。 ――『う、ぎぁあぁぁっ!!』 携帯から微かに聞こえてきた叫び声。 誰の叫び声かなんて、聞かなくても直ぐに分かる。 「…っ、Say!!」 『……の空き教し…』 成実が全て言い終える前に、俺は携帯を放り出しその場所に向かって走り出していた。 『でもさ、そこに居るの名字さんだけじゃないんだよね…。って、うわっ!』 その言葉の後に聞こえてくる、ガシャンッという何かが倒れる様な音。 しかし、この携帯の持ち主はこの場にはおらず、廊下にポツンと残されたまま。 『えぇーっ、何でアイツまで出てくんのーっ!』 成実の言葉を聞いている人は、誰もいなかった…。 →next |