「ハァ、ハァ・・・」


とっさに逃げ込んだどこかの空き教室。

最近の私は学校に勉強しに来ているのか、イジメられに来ているのか分からないような毎日を送っています。


(あぁ、おさるさんに会いたいですっ!)


教室の隅っこで、膝を抱えて小さくなっている私。

この前のお昼休みに、私が一人でどこかに行ったのが気にいらないらしい眼帯さんは、今まで以上に私から自由を奪ってしまったのです。

移動教室の時は、私を脇に抱えるか首根っこを掴み引きずるし、体育の授業の時は、なかなか更衣室に行かせてもらえず、教室で無理矢理服を脱がそうとしてきたり・・・。

今日は一緒に帰るから部活が終わるまで待っているように言われ、またもや無理矢理連れていかれそうになったのですが、眼帯さんが綺麗なお姉様達に捕まっている隙に逃げちゃいました。

その際に後ろから聞こえてきた眼帯さんの声が、なかなか耳から離れてはくれませんっ!


―『俺から逃げ切れると思うなよっ!』


脅迫ですかっ?!

校門には眼帯さんのお友達の方々が見張っているし、校内でも私を探し回っているようで、さっきからひっきりなしに私の名前を呼ぶ声が聞こえてきます。

お友達が1人しかいない私に対しての嫌味ですか?

それとも、当て付けですか?


「うぅ・・・グスッ」


涙だけじゃなくて、鼻水まで出てきました。


「ハイ、ティッシュどーぞ」

「あ、有り難うございます」


差し出されたポケットティッシュでチーンと鼻をかんだ。

って・・・アレ?

確か、ここは空き教室で私一人しかいなかったハズなんじゃ・・・。

恐る恐る顔を上げてみれば・・・、


「アンタが名前チャン?政宗のお気に入りの・・・」


鮮やかなオレンジ色の髪をした人が、ニコニコと私を見下ろしていました。


「ふ〜ん、アンタがねぇ・・・」


固まり続ける私をよそに、その男の人は私をジロジロと観察するように見ています。

笑顔なんですが、どことなく眼帯さんと同じ様な雰囲気に、驚きで止まっていた涙がじわじわと溢れてきました。




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