ブワァッとまるで風が吹いたかの様に、部屋に殺気が立ち込めた。

その殺気がピリピリと刺す様に肌を刺激する。


(…面白くなってきたじゃん)


ニヤリと口元は弧を画くが、心地いい殺気に当てられ頭は段々と冴え渡っていく。

目の前にいる女が元CEDEFという事以上に、ある事がベルフェゴールの興味を引いたのだ。


―『あいつはなかなかやるぞぉ…』


どういう意味かとスクアーロに尋ねれば、過去に一度―揺りかごの時に―本気で殺り合った事があったのだと言う。

スクアーロと本気で殺り合ったにも関わらず、五体満足で生きている。

これだけで、ベルフェゴールにとっては“女を殺る”という理由には十分だった。

自分が当てる気で投げたナイフを避けるほどの瞬発力。

それは認めてもいいが、女は避けるだけで一向に攻めてはこない。

それに苛立ち、挑発する為に“CEDEF”の事を持ち出した途端、女の様子が豹変した。


その女の姿を見た瞬間、ゾクゾクッとしたモノがベルフェゴールの身体中を駆け巡っていく。


それは、本気で殺り合える者と出会えた喜びからか、はたまた別の理由からか…。


どちらにせよ、ベルフェゴールは目の前にいる女の事で、頭が一杯だった。


「…を、CEDEFをバカにするなっ!!」


うつ向き加減だった顔を上げた女はそう叫ぶと、一気にベルフェゴールとの距離を詰めてきた。




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