メイドが持って来てくれた朝食を食べる気にもなれず、私はシャワーを浴びる事にした。

みっともないくらいに泣き腫らした目。

取り合えずそれをどうにかしたかったのと自分の気持ちを入れ替える為でもあった。


――私はCEDEFではなく、ヴァリアー。


そう頭に叩き込まなければならないくらい、ヴァリアーに入れられるというのは予想外だったのだ。

ヴァリアーとCEDEFのボンゴレでの立場は正反対で、表面的には何も問題はないが水面下では対立していると言っても過言じゃない。

私はいつ殺されても不思議じゃないし、もし私が殺されたとしても今のボンゴレ本部が動く事はないだろう。


『無駄死にはするな』


初めて家光に会った時から、言われ続けてきた言葉。

その言葉を噛み締めながら、シャワーを止めた。


 ◇◆◇


バスローブを身につけてバスルームを出る。

喉の渇きを満たす為に、朝食と共に持ってきてもらったミネラルウォーターを手にした瞬間、部屋に広がる殺気。


「・・・・・・?!」


その殺気の中心にハッと目を向けた私の視界には、真っ直ぐ私に向かってくる銀色のナイフだった。

ミネラルウォーターから手を離し、それを避ける。

ミネラルウォーターのボトルが朝食の上に落ちる。

朝食がワゴンから落ち、音を立ててカーペットを汚していく。

その間にも、避けた私を狙って次々とナイフが襲ってくる。


「・・・チッ」


思わず舌打ちをしてしまった。

殺気を出されるまで相手の気配に気付かなかった自分自身にも、相手に私がどこに動くか読まれてしまっている事にも腹が立ったからだ。


「そうそう、そうじゃなきゃ面白くないじゃん」


ただナイフを避けるだけの私を馬鹿にした様に“しししっ”と口を歪めて笑う男。

私の武器は10代目に言われて、以前のマンションに置いてきたまま。

つまり、この部屋にある物で、私を狙う男―ベルフェゴールに対抗しなくてはならない。

武器になりそうな物を探しながらナイフを避けるが、流石ヴァリアーの幹部といったところか、私の顔や体に次々とナイフがかすって傷を付けていく。

そんな時、ベルフェゴールが口を開いた。


「元CEDEFっても、避けるのが精一杯なのかよ」


たいしたことねぇーの、と嘲笑うベルフェゴール。

CEDEFを、家光の事を馬鹿にするかのような彼の表情を見た瞬間、私の中で何が切れた。



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