何時まで経っても俺達の話し合いは平行線を辿る。


『名前を戻せ』

『それは、無理です』


こんな無駄な会話が何度も何度も繰り返される。

俺の気持ちを察する様子すら見せず、俺に殺気を飛ばしてくる父親。

気付いてるだろ?

俺が怒りで震える体を、必死に拳を握り絞めて我慢している事。

必死に冷静を装っている事も・・・。


「いい加減にしてくれっ!そんなに“あの女”が大事なのかっ?!」


バンッとテーブルを叩き付けて、父さんを睨み付けた。

さっきから父さんが口にするのは“あの女”の名前ばかり・・・。


「俺や母さんに悪いと思わないのかっ?!」


“悪かった”“すまない”と、一言でも謝罪してくれたなら・・・、


「―・・・を、母さんを愛してないのかよっ?!」


本気じゃなく遊びだと、別れると言ってくれたなら・・・、


「母さんに悪いとは思わないのかよっ!」


マフィアの事を知ってから、初めて知った父さんの本当の仕事。

家になかなか帰ってこないのも、俺や母さんを巻き込まない為だったんだと、そう思っていた。


「―・・・奈々の事は、勿論愛している」

「だったら・・・っ!」






「でもな、俺にとって名前は



“愛してる”なんて、そんな言葉じゃ 表せねぇ存在だ」


想像もつかなかったその言葉に、俺の全てが時間を止めてしまった。


「・・・はっ?・・・な、んだ・・・よ」

「お前にも、その内分かるさ・・・」


そんな理解出来ない言葉だけを残して、父さんは部屋を出ていってしまった。

張り詰めていたモノが一気に無くなり、俺は崩れるようにソファーに腰を沈めた。








「なぁ、リボーン。


・・・リボーンには父さんの気持ちが理解出来るのか?」



俺は愛する人が1人いればそれだけで十分だと・・・そう思う。


「・・・俺の答えで、お前は満足出来るのか?」


暫くの沈黙の後、リボーンはそう逆に尋ねてきた。


「・・・・・・・・・・」


その問いに、俺は返事を返す事が出来なかった。



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