屋敷の扉が開いた瞬間、嫌でも感じる重苦しい雰囲気に、「やっぱり・・・」と溜め息を吐きそうになった。


「10代目・・・」

「・・・まぁ、大丈夫だよ」


上手く笑える自信がなくて、隼人から視線を外したままそう口にした。

渋る隼人に部屋へ戻るように言い聞かせて、俺は自分の執務室へと歩き出す。

執務室の扉の前で、思わず息を飲んでしまった。

部屋の中から流れてくるのは、今にも俺を飲み込んでしまいそうな重圧。

ノブを握る手が妙に汗ばんできて、気持ちが悪い。


 ◇◆◇


「・・・何の連絡も無しに、今日はどうしたの?」


この男が言いたい事なんて分かっているくせに、俺の口から出てきたのはそんな言葉。

ソファーに座ってエスプレッソを飲んでいるリボーンの向かいに座っている人物。


――沢田家光


家で見せる表情とは違い、その眼差しは鋭く、笑みさえ浮かべず、俺を見据えていた。

さっき以上に重くなった部屋の空気。

そんな中で、リボーンだけが余裕の表情を浮かべていた。


「・・・皆まで言わなくても、分かってんだろうが・・・」


今まで一度も聞いた事のない声色で、そう告げた父親。


違う。

何もかも、違う。




――この人は、本当に自分の父親なのだろうか?




これも全て、あの女のせいなのか?

なぁ、教えてくれよ…。



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