カス鮫が女を連れて出ていった後、ドカス共が無理矢理置いていった書類に目を通してた。

本来なら、目を通すなんてことはしねぇ。

だが、あの餓鬼の目が何故か気に掛った。

ジジイと同じ様に甘ったれたヤツの瞳には、僅かだが影っていた。


――あの女には、何かある。


現に、ヴァリアーの監視役に女一人だけなんて、殺してくれと言っているようなもんだ。

そして、女の経歴には不自然な点があった。

ここ数年の経歴が白紙。

部下を呼び出し、直ぐにあの女について調べさせた。

ヴァリアーにおいて、過去がどうだろうと関係ねぇ。

使えるヤツか使えねぇヤツか、重要なのはそれだけだ。

だが、俺の直感が告げた。

調べておいて損はねぇと・・・。


 ◇◆◇


「う"お"ぉい、ボスさんよぉ。あの女を・・・」


女を部屋まで連れて行った後、そのまま俺は任務に出た。

本当ならば直ぐにあのクソボスにあの女について話したかったが、任務がある以上、そっちを優先した。

じゃなきゃ、後が怖えぇ…。

予定よりも早く任務を終わらせザンザスの部屋へと足早に向かった俺は、扉を開けた瞬間、固まってしまった。


――そこには、ニンマリと嫌な笑みを浮かべる暴君。


今までの経験から、嫌な予感がしてならない。

否、嫌な予感しかしねぇ。

引きつっているであろう俺の顔めがけて、バシッと書類が投げつけられた。


「テメェ・・・」

「・・・・・・・・・」


睨みつけたところで、あの暴君に敵うワケもなく、反対に殺気の籠った視線を返された。

心中で舌打ちした後、俺はソファーに腰かけてからその書類に目を通していく。


次第に、俺の口元が上がり始める。

確かに、面白い事になりそうだ。



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