スクアーロに案内された部屋は、ヴァリアーの幹部達の部屋のすぐ傍。 勿論、これは私を監視する為である。 私の部屋は以前住んでいた場所とは何もかもが違っていた。 この屋敷相応に豪華な内装。 ――バタンッ 背後から扉が閉まる音がした。 けれど、私は案内してくれたスクアーロにお礼を言う事もなく、振り返る事もなく、ただその部屋で佇んでいる事しか出来なかった。 ここには、家光が足の小指をぶつけたテーブルがなあい。 半泣きな貴方の顔を見て、思わず笑ってしまった。 家光とお揃いのカップもない。 日本茶が飲みたいという貴方の為に、お茶葉を探し回った。 家光がよくうたた寝していた、あのソファーもない。 私には大きなソファーでも、貴方には窮屈そうに見えた。 酔い潰れて鼾をかく家光に、よく掛けてあげたブランケットもない。 「もう、仕方ないなぁ」なんて文句を言いながらも、私の顔は自然と笑顔になっていた。 ここには、私と家光を繋ぐモノなどなにもない。 ポロポロと私の頬を伝っていく涙。 ―「名前」 いつも私が泣くと家光はうろたえて、もう泣くな・・・と私を抱き締めてくれていた。 泣き崩れた私を慰めてくれた人は、 もう、いない。 →next [*前] | [次#] |