私の目の前で、9代目とスクアーロが話しているというのに、私の瞳はただその光景を写しているだけだった。 今、私を取り巻くこの環境の中で、ただ漠然と襲ってくる恐怖を抑える事に必死だった。 (家光・・・・) 離れる事を自分から望んだくせに、いざそうなってみたら・・・。 10代目だけでなく、9代目、そしてヴァリアー。 これだけの人達を巻き込んでしまった以上、二度と家光と以前のように会う事は出来ない。 こう現実になってしまってから、怖いと思ってしまうなんて、自分でも馬鹿らしいと思ってしまう。 けれど・・・。 あの人と出会ってから今までずっと、私には彼しかいなかった。 彼しか必要としてこなかった。 彼にだけ必要とされたかった。 否、彼にだけ必要とされればよかったのだ。 ――それだけが、私の存在意義。 そう思って、今まで生きてきたのだ。 ◇◆◇ 「・・・っ?!」 不意に強い力で腕を掴み上げられる。 「・・・いつまでそうしてるつもりだぁ」 私の腕を掴み上げたのはスクアーロで、いつの間にか窓からは西日が差し込み、部屋を茜色に染めていた。 スクアーロの影が長く伸びて、私の頭上に暗い影を落とす。 「・・・あれ、9代目は・・・?」 そう問いかけた私に、スクアーロは「帰ったぜぇ」と呆れたように溜め息を吐き、私の腕を離した。 「付いてこい」 舌打ちと共にそう言われ、私はソファーから腰を上げた。 →next [*前] | [次#] |