「・・・黙れっ!!」

「・・・っ」


さっきから喚く女の声が耳障りで仕方ない。

直ぐに名前を追いかけようとした俺にこの女が縋り付いてきた。

その女を力一杯押し退けた時、女は倒れた時にリビングにあったゴミ箱にぶつかってしまった。

散らかったゴミの中に、俺が名前に送った指輪を見た瞬間、――時が止まった。

体中から力が抜けてしまって、そのままその場に座り込んでしまった。

女は俺が自分を選んだのだと勘違いしているのか、俺に抱きついてくる。

「好き」「愛してる」「本気だから」なんて嬉しそうに笑っている。

こんなハズじゃなかった。

最新は驚いたのと同時に嬉しかった。

ようやく名前が妬いてくれたのだと思ったからだ。

けど、そうじゃなかった。

ゴミに埋もれている指輪は、俺達の別れを意味している。


何故だ?

何故だ?

何故だ?


俺と同じように、名前の頭の中も心の中も俺で一杯にしたかっただけなのに・・・。

絶望の中にいた俺は、玄関の扉が開く音で現実に戻る。


「名前!!」


土下座でも何でもする。名前が戻ってきてくれるなら・・・。


「ククッ・・・いいザマだなぁ、銀八」


けど、そこにいたのは名前じゃなく、俺を見下している高杉だった。



後悔など知らぬ
(残された指輪をギュッと握りしめた)



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