校門の前がやけに騒がしいと思っていたけれど、理由がわかればこの騒がしさにも納得してしまった。

見たことのある車。

中をそっと覗いてみれば、そこには土方君が乗っていて、私と目が合った途端、彼は車から降りてきた。


「今日はどうしたの?」

「…あ、いや、なんつーか…」


視線を逸らし言葉を濁す土方君。

どうして土方君がわざわざここに来たか察しはついているけれど、こんなに一目がある場所じゃ、私も話を切り出し難い。


「――送ってくれる?」


私がそう言えば、土方君は助手席のドアを開けてくれた。


  ◇◆◇


二人っきりの車内。

バイト先や大学の話、最近できた旨い店の話とか、どうでもいい話題ばかりが俺の口から出てきて、肝心なことは口に出せないでいた。

何度目かに訪れた沈黙。

意を決して言い出そうとした俺だったが、名字が先に話始めてしまった。


「―銀八とちゃんと二人で話し合った上で、別れたから…。いろいろと心配かけてごめんなさい」


名字は穏やかな表情でそう言って、また、他愛ないことを話始めた。

けれど、俺の耳にはちっとも入ってこない。

だって、その表情は俺が"いつも"見ていた教師の表情で、名字との距離が高校生だった頃と変わらないんだと、俺に思い知らせたからだ。

だからといって、俺には名字のことを諦めるなんて選択肢はない。

例え何年かかったとしても、この距離を無くしてみせる。



求める事をやめられない
(ずっと迷っていたが、漸く決心出来た)



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