さっきから居心地が悪くて仕方がない。

勿論そうなる事は覚悟して来たのだけれど、自分の予想以上というか…改めて自分が短気であると思い知らされる。

最初は外で待っていたのだけれど、ジロジロと自分を見てくる興味津々な視線に耐えられなくなって車内へと避難した。


「ちっ、煙草が切れた」


少しでも気を紛らわせようと、煙草に手を伸ばしたものの、生憎空だった。そして、車の灰皿には山盛りになった吸殻。

買いに行こうかと思ったが、この場を離れている間に彼女が帰ってしまったらと思うと、行くに行けなくなってしまう。


「はぁ、しょうがねぇか…」


溜め息を吐き、ぐしゃりと煙草の空き箱を握り潰した時、コンコンと窓を叩く音が車内に響いた。

あ"ぁっ、誰だ?と睨み付けてみれば、そこにいたのは自分が会いたいと思っていた人物が車内を覗き込むように立っていた。



「…名前」



仮想現実と現実の境目
(咄嗟に出たのは、いつも心の中で呼んでいた貴方の名前だった)


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