月曜日の早朝。土日と自分でも驚くくらい泣いて過ごしたせいか、しっかりと冷やしてはいたが、鏡に映る私の目は若干腫れていた。 「…まぁ、大丈夫でしょ」 銀八や晋助には気付かれてしまうだろうけど、他の人に気付かれなければ問題はない。 私と銀八との関係に終止符は打った。 以前は私が一方的に別れを告げた。けれど、今度は二人で決めた別れだ。 また思考の渦に飲み込まれそうになり、頭を切り替えるように私は冷水で顔を濡らした。 ◇◆◇ いつも通りの学校の風景。 行き交う生徒達に、いつも通りを装って挨拶をしていく。けれど、職員室に近づくにつれて緊張感に襲われる。 視線を生徒から前へと戻すと、そこには見慣れた彼の後ろ姿。 シワシワになった白衣。 ボサボサな髪の毛。 ペタペタとサンダルを鳴らし、気ダルそうに歩く姿。 ほんの少しの間だけ見れなかっただけなのに、私の胸にじんわりと懐かしさが広がっていく。 その姿をもう少し見ていたくて、声を掛けるのを暫し忘れてしまった。 「よぉ……」 「…おはようございます、坂田先生」 私の視線に気付いたのか、ふと振り返った銀八は以前と変わりない。 グシャグシャと頭を掻いて欠伸をしながら、声を掛けてくれた事が嬉しい。 銀八の隣に並び、たわいない話をしながら職員室へと向かう。 膿んだ傷口から這い出る明日 (私達の別れと引き替えに手に入れた日常) →next |