何度も途切れる銀八の言葉。

銀八の顔を見たら泣いてしまう事は分かっていたから、私はひたすら海を眺め続けた。

口を開いた瞬間、涙が溢れてしまうのも分かっていたから口を開く事も出来きない。


―泣くのを我慢しているのは私だけじゃない。


それが分かっているからこそ、私は必死に耐えていた。

それに、始めに別れを切り出した私が、ここで泣くのは卑怯な気がしたから・・・。


 ◇◆◇


どのくらいの間、2人で海を眺めていたのだろう?

自分でも分からないくらい、長く感じた。

銀八の話も聞き終えた今、こうしてこの海を2人で眺めてるのも最後になるだろう。

隣に居ても、2人の間には埋まる事のない距離を感じる。

私の気持ちを確かめたかった銀八。

銀八の気持ちを知るのを恐れた私。

互いに違う選択肢を選らんでいたら、こんな別れを迎える事もなかったかもしれない。


けれど、今となってはもう遅い。


あまりに多くの人を巻き込み、傷付けてしまった私達に選ぶ道等1つしかない。

いつか、別れを選らんだ事を後悔する日が来るかもしれない。

これからも銀八を想って泣く日々が続くかもしれない。

それでも、私達は自分達で選らんだ“別れ”という道を進んでいなかくてはならないのだ。


「・・・ねぇ、銀八」


立ち上がった私は、銀八に背を向けたまま口を開いた。


「大好き、だった・・・よ・・・っ」

「・・・・・・・っ」


ボロボロと涙を溢しながら、私は歩き出した。

涙を拭う事もせず、だだひたすら声を殺したまま泣き続けた。



罪と罰に関する拾の掟
(傷付かない別れなんて、ある筈がない)



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